スターマー英首相が導くウクライナ和平への挑戦
【ロンドン=黒瀬悦成】ロンドンで行われた欧州首脳会議では、ロシア侵攻によるウクライナ情勢をめぐってウクライナの和平方策が議論されました。この会合でスターマー英首相は、英仏をはじめとする欧州諸国とウクライナが和平実現に向けた計画案の策定に合意したと発表しました。
欧州主導の新たな安全保障体制
スターマー氏は、ウクライナ情勢を含む欧州の安全保障について「歴史的な岐路」に立っているとし、米国主体から欧州主導への転換を目指す考えを示しています。これは欧州がより一層自立した防衛措置を講じるための動きです。
ウクライナ和平計画の具体像
スターマー氏によると、和平計画案には、戦闘終結後に英仏などの「有志国連合」が平和維持部隊を派遣する内容が盛り込まれています。これに対して「多くの国が計画案への参加を表明した」とスターマー氏は指摘しています。さらに英国は、地上部隊に加えて航空機も投入する準備があることを明言しました。
米国との連携の重要性
計画案がまとまり次第、スターマー氏はトランプ米大統領に提示し、米国の協力を要請する意向です。「米国から好意的反応が期待できないと思ったら策定しない」とする一方で、「米国を信頼できない同盟国だとは思わない」として、米国からの支持獲得に楽観的な見通しを示しています。
追加軍事支援とその目的
英国はさらに、ウクライナへの軍事支援として16億ポンド(約3030億円)を貸し付けることを発表しました。これはロシアのドローン攻撃を想定したもので、射程約6キロの多用途防空ミサイル約5千発の購入費用に充てられる予定です。スターマー英首相はこれがウクライナの防衛力を強化する重要な一助となると見ています。
欧州とカナダの協調姿勢
会合には、欧州およびカナダの首脳や閣僚、ゼレンスキー大統領、NATOや欧州委員会の代表らが参加。ウクライナに対する軍事支援と、ロシアへの経済的圧力の継続を確認しました。また、和平実現に向け、ウクライナの防衛力強化支援で一致しています。
ゼレンスキー大統領の動向
会合後、ゼレンスキー大統領はチャールズ国王と英東部サンドリンガムの国王別邸で会談しました。そして一部記者団に対し、米国が提案した鉱物資源開発の合意文書に「署名する用意がある」と述べ、米国との関係修復に前向きな姿勢を示しました。