外国為替及び外国貿易法違反事件における不起訴の理由とは
2020年、大川原化工機の社長である大川原正明氏ら3名が、外国為替及び外国貿易法(外為法)違反の容疑で逮捕されました。彼らは、噴霧乾燥機を中国に不正に輸出したとされています。しかしながら、翌年に起訴が取り消されました。この事件については、虚偽有印公文書作成・同行使の疑いで当時の警視庁公安部の捜査員が書類送検されましたが、東京地検は2023年1月8日に「不起訴」(嫌疑不十分)としました。
事件の背景と不起訴への反発
大川原化工機側は「警視庁と同じ捜査機関である検察庁が刑事事件を打ち切る判断には納得がいかない」と厳しく反発しています。特に、逮捕された元取締役の島田順司氏は「不起訴ありきで手続きが形式的に進められたのではないか」と不満を表明しました。このため、同社は1月17日に検察審査会に起訴を求める審査を申し立てました。
不起訴の理由としての疑義と関係者の行動
この事件に関しては、関係者の供述書が正確ではないと指摘されています。当時取り調べを担当していた安積伸介警部補は、弁解録取書の内容について事実と異なる点を修正するよう求められた際、修正したふりをして島田氏に署名・捺印させたとされています。この弁解録取書は後に作り直されたものの、修正前の書面はシュレッダーで破棄されました。このような不適切な対応が明らかになっていますが、今回の不起訴処分について東京地検側は、「罪を認定することに疑義があり、事情を総合的に考慮した」と説明し、不起訴の理由を具体的には明らかにしていません。
捜査報告書の虚偽内容と輸出規制
噴霧乾燥機は、特定の条件下で生物兵器の製造に転用される恐れがあるため、輸出規制の対象とされています。警視庁公安部は大川原化工機の製品もこれに該当すると解釈し、立件を試みました。しかし、実際の捜査では噴霧乾燥機に温度が上がらない製品部分があり、殺菌できないというデータがあったことが判明しています。これにより、捜査の正当性に疑義が生じたと見られています。
警視庁捜査2課は昨年11月、告発を受けた3人を書類送検しましたが、東京地検は起訴を見送る決定をしました。警視庁は地検の処分についてコメントする立場にないとしています。