ゼレンスキー大統領と米国の外交関係の課題
2023年2月28日、ワシントンで行われたトランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領との会談は、バンス米副大統領の一言によって険悪なものとなりました。
ゼレンスキー大統領の安全保障への懸念
ゼレンスキー大統領は、ロシアがウクライナ南部クリミア半島を一方的に併合した2014年以降の経緯を背景に、ウクライナへの「安全の保証」の必要性を説明しようとしました。しかし、バンス氏から「ここでそんな話は無礼だ」「(トランプ)大統領に感謝の言葉はないのか」と批判される場面がありました。
会談での緊張したやりとり
ゼレンスキー大統領は、会談冒頭で複数回トランプ氏への感謝の意を表明しましたが、その後の会話は緊張が走りました。ゼレンスキー氏の「ウクライナを訪れてほしい」という訴えに対して、バンス氏が「プロパガンダツアーに連れ歩いている」と批判したのです。また、トランプ大統領もゼレンスキー氏に対して「われわれ(米国が)どのように感じるべきかを押し付けるな」「ウクライナは感謝しろ」と声を荒らげました。
ウクライナの資源を巡る協議の背景
今回の会談では、ウクライナの鉱物資源を巡る協議も破綻しました。ゼレンスキー大統領がトランプ大統領に昨年9月に提案した案であり、ウクライナ東部に多い資源の開発を材料に米国との長期的な信頼構築を狙っていました。しかし、トランプ氏は「ゼレンスキー氏には交渉カードがない」とし、ウクライナや欧州が求める「安全の保証」への関与には消極的です。
トランプ大統領の外交方針と今後の影響
トランプ大統領は自身の外交方針として「力による平和」を掲げています。これは、旧ソ連との冷戦を終結に導いたレーガン元大統領をはじめとする歴代米政権が掲げてきたスローガンです。しかし、今回の公開口論で浮き彫りになったのは、一方的な現状変更を認めないという基本原則や、そのために同盟・友好国を重視する姿勢が見られず、十分な事前調整もなしに強引な取引を迫る姿でした。
米国とロシアの緊張関係に関心を持つ中国
安全保障の専門家の間では、米国がロシアに宥和的な姿勢を見せることは、中国などの現状変更勢力を喜ばせることにつながるとの見方が強まっています。ブッシュ(息子)政権で大統領次席補佐官を務めたカール・ローブ氏も、両首脳の口論について「唯一の勝者はプーチン氏だ」と指摘し、懸念を示しました。
このように、ゼレンスキー大統領と米国の外交関係は多くの課題を抱えており、今後の動向から目が離せません。