新たな感染症対策と創薬強化:政府の「健康・医療戦略」
政府は、2023年4月からの5年間を視野に入れた「健康・医療戦略」を策定し、新型コロナウイルス感染症の経験を活かして新たな感染症に対する備えと創薬力の強化を柱としました。この戦略は、海外で開発された薬の日本での使用が難しい「ドラッグロス」現象を解消するための取り組みも含まれています。
コロナが浮き彫りにした医薬品産業の課題
石破茂首相は、健康・医療戦略推進本部で「コロナ対応により、国内の医薬品産業における国際競争力の低下や研究開発、生産能力の低下が大きな課題として明らかになった」と指摘しました。この戦略は、これらの課題に対応するための具体的な方策を示しています。
健康寿命の延伸に向けた取り組み
「健康・医療戦略」では、平均寿命を上回るスピードで健康寿命を延ばすことが目標とされています。特にドラッグロスが生じている86品目のうち、必要とされる薬については2026年度までに開発を開始する計画です。また、感染症の薬やワクチン5製品を2028年度までに薬事承認させるとしています。
「ヒトチャレンジ試験」と倫理・安全性の課題
新しい研究開発の推進計画と関連して、病原体を直接人間に感染させて調査を行う「ヒトチャレンジ試験」の導入についても検討されています。しかし、その倫理性や安全性に対する懸念から、慎重に検討を進める必要があります。
「ヒトチャレンジ試験」は医学研究において注目されていますが、その実施にあたっては徹底的な検証が求められます。世界中で様々な議論が行われており、日本においても今後の課題となるでしょう。この試験がもたらす利点とリスクを慎重に考慮し、倫理的に許容される方法で進めることが期待されます。
これらの取り組みにより、日本の医薬品産業の競争力が向上し、国民の健康と安全がより一層強化されることが期待されています。