【AED被害届】救命措置における懸念と現実
心肺停止状態の女性にAED(自動体外式除細動器)を使用する際、「セクハラで訴えられるのでは」と不安を抱える人が増えている。しかし、実際にはそのような事例は存在しない。にもかかわらず、女性に対するAEDの使用率は低く、この問題について専門家の意見を交えながら探ります。
■【AED被害届】の現状と誤解
インターネットテレビ局「ABEMA」の報道番組にて、ある男性が女性にAEDを使って救命した後、【強制わいせつ】で被害届を出されたとされる事例が報じられた。しかし、放送後にはSNS上で多くの批判が巻き起こり、「男性の話はあり得ない」との声が消防や医療の専門家から寄せられました。
さらに、ABEMAにこの件についての問い合わせを行ったところ、広報からは「番組制作の過程については回答を差し控えます」との返答がありました。これに対して警察庁に確認したところ、「このような事例は把握しておりません」との回答が得られました。
■AED使用率の男女差
取材を進めると、【AEDの女性への使用率】が男性の半分以下であるという実態が浮かび上がってきました。旭化成ゾーンメディカルが2023年に実施した調査によれば、女性に対する救命処置への抵抗感の理由として最も多かったのは、「衣服を脱がせたり、肌に触れることに抵抗がある」で53.8%、次いで「セクハラで訴えられないか心配」が34.0%となっています。
京都大学の研究グループが行った調査によると、2008~2015年における学校での心停止事例の中で、AEDが使用された割合は、男子生徒に対しては83.2%、女子生徒に対しては55.6%という結果でした。
■女性へのAED使用における課題と将来
実際に大阪市消防局の救助隊員として活動していた兼平豪さんは、女性への救命措置が男性ほど行われていない現実を感じていたと述べています。熊本大学病院によると、2005~2020年の約35万例の心停止調査では、男性に対するAED使用率は3.2%、女性はその半分以下の1.5%に留まりました。
このように、【AED被害届】に対する誤解が広まる中で、女性へのAED使用に不安を感じる人が多いことが分かります。しかし、現実には訴えられたケースが確認されておらず、救命が最優先であることを理解することが重要です。
今後、誤解を解消し、【AEDを安心して使用できる環境】を整えることが、救命率を向上させるカギとなるでしょう。